Simple Life

FASHION + LIFESTYLE

JOURNAL

RECENT POSTS 2020. 03.27

MUSIC & MOVIE vol.09 MUSIC & MOVIE vol.09

JOURNALMUSIC & MOVIE TEXT:Covo Tagata / ILLUSTRATION:Tomohiko Matsumoto(dig) VOL 09 CHILL 静かな夜にこそ肴にしたい名作たち

動画CMにネコが頻出し、フォークやAORなどのシックなサウンドがリバイバルするなど、インドアコンテンツの多様性が際立つ現代。そして、まるで社会が癒しに枯渇しているかのような時代性を投影してか、静かにバズる"CHILL"というキーワード。今回は"RELAX"とはやや違う、少しスピリチュアルなこのテーマで連載をお届けします。

Music

当時の風が香る変わらぬ価値

01 Recommended Album No.01
PAELLAS / パエリアズ Shooting Star / シューティング・スター

踊るベース、硬いスネア、跳ねるギター、充満するキーボード。この曲を聴いて「懐かしい」と思うヒトもいれば「今っぽい」と思うヒトもいるだろう。「リバイバルが騒がれるシティポップか」と横目でみるヒトもいるかもしれない。しかし、そんな能書きがいかに音楽をつまらなくしているのかという気づきを改めて教えてくれるのがPAELLASである。少なくとも筆者は青春時代に魅せられた舶来モノの音楽と同じ衝撃を受けた。日本人が奏でる日本語の楽曲をこんなにも全力でカッコいいと思える。良い時代が来たものだ。昨年解散した事実が非常に悔やまれるものの、彼らのつくる世界観に対し、たとえばスティーブ・ルカサーのつくるそれと並列に陶酔する未来人が現れることが容易に想像できる。まずはこの曲からどうぞ。

02 Recommended Album No.02
SIMPLY RED / シンプリー・レッド Holding Back The Years / ホールディング・バック・ザ・イヤー

どこか垢ぬけないけれども、なぜか聴きいってしまう。そしてそれがとても心地よい。そんなバンドがSIMPLY REDだ。'85年にデビューし、一度は解散したものの2015年に復活した理由の実態はきっとボーカルのミック・ハックネルの都合によるものであろう。だがしかし、ひと周りしてなぜか今の時代にマッチングしているシンプリーレッドの音楽と再会を果たしてみると、それが必然と思わずにいられない。レノン&マッカトニー的な存在ではないものの、10年後も20年後もきっと聴きたくなるであろうバンドの魅力をいまいちどこの曲を通して体験してみてほしい。余談だが、バンド名の由来はハックネルの赤毛と彼らの地元サッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッドのシンボルカラーに起因するのだとか。

03 Recommended Album No.03
SHOWMORE / ショウモア Circus / サーカス

あきらかに'50年代にほぼすべてのルーツを宿すメンズカジュアルウエア好きの者にとって「現代」とは時にマイナスのイメージに振れることもあるはずだ。いつの時代の「現代」も、カルチャーに対する視線はつねに多かれ少なかれ懐古主義にも似たフィルターにさらされてきたと言っても過言ではない。さて、極めて「現代」的なshow moreである。時にジャジー、時にポップ、時にブルージーなサウンドは、一定のルーツ音楽に触れながらも独自に咀嚼され、完全に新しいモノとして昇華されている。おおむね「現代」的なミクスチャー音楽には一定のアンチが生まれやすいものだが、まずはこの代表曲を聴いて欲しい。カルチャーの枠組みを越え、懐古主義とは無縁な「いま」を生きるオリジナリティをぜひ楽しんでもらいたい。

Movie

01 Recommended Movie No.01
Mr. Holland's Opus 陽のあたる教室
凡人が世に与える価値を
平凡な物語で伝える
非凡なイマジネーション

若き日に抱いた夢。そして、日々押し寄せる現実が生む自覚のないあきらめ。さらに、夢を実現した他人に対峙した際にうっかり気づく深々としたやるせなさ。この映画はそんな哀愁に共感するすべてのヒトにオススメしたい作品だ。ストーリーはオープニングからエンディングまで終始静かに進行する。大枠のながれとしては、作曲家としての自立を目指していた主人公ホランドが生活のために音楽教師をはじめ、次第に夢よりも優先順位があがってしまった家庭と仕事に向き合った結果、数十年後に夢の実現とは違うカタチで大きな喜びを得る、というものなのだが本作の魅力はこの結果にこそある。「成功」とは限られた人間だけのものではなく、ひとりの凡人でも得ることのできるものであり、何よりも大事なのは、それはすぐに得られるものだけではなく数十年の時を経て得られるもの「も」あるということを教えてくれるのだ。人間ひとりが社会に発揮できる価値というとてつもなく大きなテーマを、ひとりの平凡な男が晩年に手にした、その男にしかわからない価値として描くことで、ダイバーシティの真理を教えてくれる名作をぜひ観てほしい。

™ and ©2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
©Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
DVD ¥1419+Tax
発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

02 Recommended Movie No.02
Le Grand Bleu グラン・ブルー
その日のメンタルで
得られるこたえが変わる
七色のクリエイティブ

クリエイティブを本質的に楽しむコツはそれらを能動的に理解しようとするスタンスにこそあり、すぐれたクリエイティブとはシャープで明瞭なメッセージと解釈の自由の余白を両立させることにある。そして、受け手と語り手のバランスがとれた時にはじめて真価を発揮するのがこの映画である。この作品には先述した「余白」が非常に多いのだ。しかし、さすがはリュック・ベッソン。内容自体はさほど難しくなく、ぼーっと観ても楽しめるし、逆に本質的に何を伝えたいのかを理解しようとするとそこには深淵な世界が用意されているので、何度観ても楽しめる仕立てになっている。もし、読者の中に初めて「グラン・ブルー」を観るヒトがいるとするならば、主演のジャン=マルク・バールと助演のジャン・レノ以外の俳優陣の演技に注目してほしい。心地よい「大根」っぷりに気づくはずだ。それでも作品全体としてのクオリティを高次元で担保しているのもリュック・ベッソンがリュック・ベッソンであるゆえだろう。役者に語らせず作品として語る。アウトプットを支配する素晴らしいクリエイターの仕事に拍手を送りたい。

©1988 GAUMONT
DVD ¥1800+Tax
発売元:角川書店

PROFILE

コボ田形 
COVO TAGATA | 
エディター

明治大学卒業後、株式会社エイ出版社に入社。男性誌「Lightning」「2nd(セカンド)」「CLUTCH MAGAZINE」のエディターを経て、某ブライダル専門誌の広告ディレクターに。アメリカンカルチャーの知見を活かしフリーランスエディターとしても活動しており、2016年9月に創刊されたサブカルチャー誌「BATTERY」においては編集長を務める。また、紙・Webにてミリタリーコンテンツを企画・制作する「MEDIARANGERS」のメンバーとしても精力的に活動を行っている。

 
MUSIC & MOVIE
ARCHIVES
SHARE